ニューヨークの街角はなぜこんなにもアートなんだ
前回の記事に引き続き、ニューヨークのアート巡りに欠かせないスポットを取り上げている『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の作者・りばてぃさん。今回はニューヨーク有数の美術館・ブルックリン美術館で開催されているデヴィッド・ボウイの特別展にくわえ、市内の公園などで無料で公開されているアート作品の数々について取り上げています。
気になるブルックリン美術館のデヴィッド・ボウイ展
先週からお届けしているニューヨークのアート散策。
今まさに、ブルックリン美術館で開催中の故スーパー・スターのデヴィッド・ボウイ(David Bowie)さんの特別展「David Bowie is」が面白そうだ。
「David Bowie is」は、2018年3月2日~7月15日まで開催中で、デヴィッド・ボウイさんのコンサートでの衣装や写真やビデオ、私物などを展示公開している。
ノリータ地区にお住まいだったので、2016年1月10日、亡くなられた後、ご自宅前にはファンが集いお花やキャンドルなど沢山寄せられたり、街角にはグラフィティ・アートが描かれるなど様々な追悼がされた。
今でも思い出し偲ぶ方々は大勢いると思う。
親日家としても有名で、歌舞伎などの日本文化から大きな影響を受けた方でもあった。
そんなデヴィッド・ボウイさんの特別展ということでなのか、ブルックリン美術館が公開する。入場前に知っておくべき情報をまとめた動画には、美術館員たちが自ら出演して、事前にチケットを購入する仕組みなどを説明しているほど。
なんとなく、ご出演されている皆さんから誇らしさのようなものが伝わってくる。
参考:David Bowie is: Know-Before-You-Go
気合いが入っているのは特別展だけじゃない。より多くの方々に閲覧してもらおうという想いがこもった非常にユニークなプロモーション、地下鉄アート展を開催。
場所は、ブロードウェイ通りとラファイエット通りの駅で、地下鉄はオレンジ色のB、D、F、M線で下車した駅構内。
もしくは、この駅は緑色の6番線が止まるブリーカー通りと駅構内で繋がっているので、そこからも向かうことができる。
駅構内の壁にはブルックリン美術館の「David Bowie is」に展示されている写真作品のレプリカを展示。
それぞれの写真には、デヴィッド・ボウイさんのニューヨークのお気に入りの場所や写真に関連したエピソードなどが添えられている。5月13日まで展示。
参考:David Bowie Art Installation Takes Over New York City Subway Station
ちなみに、ブルックリン美術館の公式インスタグラムページに掲載されている写真の中には、等身大のデヴィッド・ボウイさんの写真をニューヨークの様々な場所において撮ったユニークなものも(笑)
デヴィッド・ボウイさんへの愛を感じられる。
街のいたるところにアート作品が
デヴィッド・ボウイさんの特別展の他にも、ニューヨークには数多くの興味深いアート作品が展示されている。
その数、挙げきれない。
どれだけ挙げきれないか一目でわかるものを1つご紹介しよう。
ニューヨーク市の公園を管理する部署によるアート作品の設置場所の地図と作品情報をまとめた、「NYC Public Art Map and Guide」である。
地図上には風船型のマークでアート作品の設置場所が示されているが、以下のリンクの地図をご覧のとおり無数にある。
数え切れないほどのアート作品がニューヨーク市内に設置されているのがわかる。
参考:NYC Public Art Map and Guide
マンハッタン以外のブルックリンやスタテン島、ブロンクスはまだ風船型のマークを数えられそうだが、マンハッタンに関しては地図を拡大して見ても、風船型が重なりあっていて数えるのが困難だ。
しかも、ニューヨーク市の公園を管理する部署がまとめているものなので、ニューヨーク市ではない他のアート関連団体が設置するアート作品情報はほんの一部しか含まれていない。
代表的な例には、パーク・アベニュー沿いや、ミッドタウンのブロードウェイ沿いに展示される期間限定のアート作品などがある。
パーク・アベニューのは、The Fund for Park AvenueというNPOの非営利団体が寄付金で賄い設置しているもので、大通りであるパーク・アベニューを57~67丁目の10ブロックに様々なタイプのアート作品を期間限定で展示している。
大通りということやオフィスなどが入る高層ビルが立ち並ぶエリアだからか、他のエリアよりも比較的大きなアート作品を設置する傾向があるのも非常に興味深い。
大きなアート作品がみたいなー(笑)と思ったらここに行けば良いのだ。
ちなみに、昔からあるアート作品の設置企画ではなく、2010~2011年頃から新しく始まったもの。
新しい試みということも、他にはないユニークな作品を積極的に展示しているのかもしれない。
以下は過去に展示された作品の記事リンク。こうやって見ていくと本当に大きな作品ばかりなのがおわかり頂けるだろう。
パーク・アベニュー沿いには、このNPO団体とは別に、ビルの運営側がビル正面に展示するアート作品も多々あるので、ビルの前だけをお散歩するだけでもけっこう楽しかったりする。
2011年には巨大テディ・ベアのアート作品が登場し話題に。
ニューヨーク市がまとめた「NYC Public Art Map and Guide」には掲載されていない別のアート関連団体が設置するアート作品は他にも様々あるが、中でも近年歩行者エリアを拡大したミッドタウンのブロードウェイ沿いはパーク・アベニューとはまた違ったユニークなアート作品を展示している。
場所は、37~38丁目間で、つい最近までインタラクティブなアート作品『ループ』(Loop)が展示されていた。
高さ3メートルほどの巨大な輪っか型のアート作品で、単に眺めるだけではなく、人が中に座って備え付けのハンドルを動かすと自家発電が作動しライトが光り、おとぎ話と音楽が流れる仕組み。
まさに近年流行の『体験型』のアート作品でもあるし、自撮りにも非常にぴったりな作品となっている。
この作品はエリアを管轄するThe Garment District Alliance(日本の商工会議所のようなもの)とNY市運輸局(New York City Department of Transportation)が協力して設置したもの。
ところで、アート作品を設置することで様々な効果があるが、特にこの『ループ』のような、その場に行かないとその作品のすべてを体験できないアートは、街の活性化に繋がるという効果がある。
日本でいうところの商工会議所のような団体が企画し設置したことからもわかるように、このエリアを訪れた人に楽しい体験をしてもらいたいとか、そのアート作品に触れるためにそのエリアを訪れてほしいという想いも込められていると思う。
人が集まれば当然そのエリアのビジネスの活性化に繋がるだろうし、まったく別の新たなものが生まれる可能性だってある。
街の活性化の方法を考える際、いくらでもアイデアは出ると思うが、体験型のアート作品や、それこそパーク・アベニュー沿いの巨大なアート作品などは実際に観に来たいという気持ちを喚起するのに効果的なのだろう。
しかもニューヨークは、その辺を歩いている普通の人々も、世界各地から多種多様の文化や価値観やライフスタイルを持つ様々な人種や民族が集まっているだけあって、個性豊かで魅力的だ。
アート作品だけでなく、そこにいる人々の個性豊かな雰囲気が交わっていることが、アメリカの他の都市ではあまり感じない独特なクリエイティブな雰囲気が街角に漂っている素になっているのかもしれない。
- image by:Dariusz Gryczka/Shutterstock.com
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